裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 遼一が結婚する。
 いずれはこういう日が来るとわかっていたけれど、こんなに早いとは思わなかった。
 でもそういえば、と福岡での出来事を思い出す。
 和葉がベッドに誘った時、遼一はかなりためらっていた。歩美との見合いが決まっていたからではないだろうか。
 さっきの歩美の口ぶりから察するに、ふたりはもともと恋人同士というわけではなさそうだ。
 それは遼一の結婚に対する姿勢をよく表しているように思えた。
 いつかの日、遼一の結婚相手は彼女のような女性が相応しいのだろうと考えたのを思い出す。結婚相手に多くのものを求める彼も、歩美ならば間違いないと決めたのだろう。
 だとしてもことは結婚なのだ。不誠実なことはしたくないと思ったはず。
 だからあの時彼は、躊躇していたのだ。でも結局、和葉のわがままを聞き入れてくれた。
 聞き入れるしかなかったのかもしれない。
 ——なんてことをしてしまったの。
 胸が罪悪感でいっぱいになっていく。
 見合いの件を知ってたら、あんなことお願いしなかったのに……と思いかけて、いや違うと思い直す。
 彼は言ってたじゃないか。
 そう、ずっと彼は話があると言っていた。
 あれはただ釘を刺したかったわけでなく、もっと具体的に自分に縁談があることを告げたかったのではないだろうか。
 ——それなのに、私……。
 馬鹿な自分が情けなくて、申し訳なくて胸が痛い。
 自分には、彼との別れがつらいなんて言う資格はない。ましてや彼の話を聞いて別れを告げるなんて感傷的なことはもってのほか。
 もう合わせる顔がない。
 青ざめたまま、和葉は画面をスライドさせる。メールボックスをタップして、あるアドレスを開いた。

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