裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
「遼一が私のこと、大切にしてくれて守ってくれていたのはよくわかったし、感謝してもしきれない。でももう私、あなただけがつらい思いをするのは嫌」
 あの時彼は、取り得る中で最善の道を選んでくれた。その結果、和葉は傷ついたけれど、それは彼のせいではない。
 でももし、あの時和葉がもう少し強かったら、べつの道もあったのではと思わずにはいられない。
 だったら、これからは彼との関係を変えたかった。
 怖いものから目を逸らして守られているだけではなく、強い心で彼の隣に立っていたい。
「遼一が私を大切に想ってくれているように、私だってあなたが大切なの。だから、あなたひとりが傷ついたりするのは嫌なの」
 伝えたい思いを口にして、遼一のシャツをギュッと握ると、彼はその手を驚いたように見た。
「あなたと離れている間、私、頑張ったのよ。あの時自分がどれだけ周りに甘えていたかを思い知った。樹を生むなら誰かに守ってもらう人生じゃダメだって思って、それで一生懸命やってきた」
 結局、遼一に守られていたことには変わりなくても、努力がすべて無駄だったとは思わない。
 思いを込めて見つめると、遼一の目がわずかに揺れる。
「……そう、だったな」
 そう言って和葉の頭を優しくなでて、彼はしばらく考えていた。
 守り守られてきた関係から自らを変えるのは少し怖い。
 それはきっと彼の方も同じなのだ。
 不安と迷い、傷つく勇気。
 和葉が傷つくのを彼が恐れるのは、それはきっとそれ自体に彼が痛みを感じるから。
「——わかった」
 ゆっくりと目を閉じてようやく彼は頷いた。
 そして真っ直ぐに和葉を見た。
「一緒に行こう。つらいものを見せるかもしれないが、今の和葉なら大丈夫。それに、なにがあっても俺は和葉の味方だから」

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