裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
与えられるものをなんの疑いもなく享受して、恵まれていることにすら気づいていなかった。これでいい、それで幸せになれるからとそれ以上の努力をしなかった。
言い方はともかく、彼女の言葉はあの頃の自分に対する真っ当な評価だ。
知らずに人を傷つけて、傷つけられていたという事実をまだ受け止めきれていない。
けれど自分の中にも揺るぎない事実がある。それだけは伝えなくては。
「私……ハワイで働いてた時、歩美さんに教えてもらったこと何度も思い出して頑張ったんです。『和葉はやればできるんだからもっと向上心を持たなきゃだめよ』って言ってもらったあの言葉、いつも頭に浮かべてた……」
涙が頬を伝うのを拭うこともせずに、和葉は一生懸命言葉を紡ぐ。
「さっきの話は……ショックですけど、それでも……あの……ありがとうございました」
こちらに背を向けている歩美が、どんな表情をしているのかはわからない。
しばらくの沈黙の後、鼻を啜る音とともに、震える声がした。
「だからそういうところが、嫌いだって言ってるの」
そのままこちらを振り返ることなく彼女は部屋を出ていった。
ぴたりと、襖が閉まりしばらく沈黙した後、遼一が父親を振り返った。
「父さん、おじさんは随分回復したようです。話はできませんが、記憶は戻っているようですよ」
その言葉に彼はぴくりと肩を揺らした。
「だが……私は、彼を……」
「おじさん」
和葉は呼びかけた。
「父はおじさんを尊敬していました。昔から家で酔っ払うと学生時代の話をして、先輩は日本の星だ! 俺はそんな先輩の力になるんだって私と母は耳にタコができるくらい聞かされてたんですよ」
和葉の言葉に、彼は顔を歪め唸るような声を出した。
「だが、俺はその寺坂を……」
「父は、おじさんは情に流されずに経営判断を下せる稀有な人だって言っていました。私には難しいことはわかりませんが、横領の証拠があったのなら、たとえ友人だったとしても解任されたのは正しい判断だったのではないでしょうか」
遼一が父親に茶封筒を差し出した。
「おじさんが準備していた使途不明金に関する調査報告書です。倒れなければあの時に提出されていたはずです。もしかしたら福原副社長はおじさんの動きに気がついて先手を打ったのかもしれません。いずれにしてもおじさんは、父さんを裏切っていなかった。優秀な右腕だったんですよ」
言い方はともかく、彼女の言葉はあの頃の自分に対する真っ当な評価だ。
知らずに人を傷つけて、傷つけられていたという事実をまだ受け止めきれていない。
けれど自分の中にも揺るぎない事実がある。それだけは伝えなくては。
「私……ハワイで働いてた時、歩美さんに教えてもらったこと何度も思い出して頑張ったんです。『和葉はやればできるんだからもっと向上心を持たなきゃだめよ』って言ってもらったあの言葉、いつも頭に浮かべてた……」
涙が頬を伝うのを拭うこともせずに、和葉は一生懸命言葉を紡ぐ。
「さっきの話は……ショックですけど、それでも……あの……ありがとうございました」
こちらに背を向けている歩美が、どんな表情をしているのかはわからない。
しばらくの沈黙の後、鼻を啜る音とともに、震える声がした。
「だからそういうところが、嫌いだって言ってるの」
そのままこちらを振り返ることなく彼女は部屋を出ていった。
ぴたりと、襖が閉まりしばらく沈黙した後、遼一が父親を振り返った。
「父さん、おじさんは随分回復したようです。話はできませんが、記憶は戻っているようですよ」
その言葉に彼はぴくりと肩を揺らした。
「だが……私は、彼を……」
「おじさん」
和葉は呼びかけた。
「父はおじさんを尊敬していました。昔から家で酔っ払うと学生時代の話をして、先輩は日本の星だ! 俺はそんな先輩の力になるんだって私と母は耳にタコができるくらい聞かされてたんですよ」
和葉の言葉に、彼は顔を歪め唸るような声を出した。
「だが、俺はその寺坂を……」
「父は、おじさんは情に流されずに経営判断を下せる稀有な人だって言っていました。私には難しいことはわかりませんが、横領の証拠があったのなら、たとえ友人だったとしても解任されたのは正しい判断だったのではないでしょうか」
遼一が父親に茶封筒を差し出した。
「おじさんが準備していた使途不明金に関する調査報告書です。倒れなければあの時に提出されていたはずです。もしかしたら福原副社長はおじさんの動きに気がついて先手を打ったのかもしれません。いずれにしてもおじさんは、父さんを裏切っていなかった。優秀な右腕だったんですよ」