裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
「あ、樹、おじさんのお膝に乗ってるよ」
 母からのメッセージに気がついたのは、遼一とふたりでマンションに帰ってきた時だった。
 ネクタイをくつろげながら、遼一が和葉の携帯の画面を見覗き込んだ。
「樹、人見知りしないのか」
「遼一に似てるからな?」
 ふふっと笑って和葉が言うと、遼一は顔をしかめた。
 話し合いが無事に終わったふたりが、樹がいる実家ではなく一旦遼一のマンションへ戻ってきたのは、遼一が持っていた機密事項が詰まった書類やデータを置くためである。
 遼一が着替えたら樹を迎えにいこうと話しているとポンッという音がして、また母からメッセージが入る。
《お父さんたち盛り上がって、今日は久しぶりに賑やかになりそう。いっくんもご機嫌だから今日はこのまま泊めてもいい? 和葉は明日迎えにおいで》
 その内容に和葉は遼一と顔を見合わせる。
 つまりは、和葉と遼一に久しぶりにふたりで過ごしては?と気を利かせてくれたのだ。料亭での出来事を遼一の父から聞いたのかもしれない。
 親からそういう気の使われ方をするなんて恥ずかしすぎると思うけれど、彼に愛されていたのだという幸福に浸りたい……という気もするし。
 などと考えていると、遼一がふっと笑ってソファに座った。
「和葉に任せるけど。でもそうだな……とりあえず、今すぐに行くんじゃなくてもう少しだけ和葉に触れさせてもらいたいな。和葉が戻ってきたと実感したい」
 そう言って両腕を広げる。そこから甘い香りが放たれているかのように、和葉は吸い寄せられて腕に抱かれる。
 大好きな彼の香りに抱き込まれると、雲ひとつない大空を漂っている心地がした。
 本当に彼と愛し合っているのだということが信じられなくて、怖いくらい幸せだ。
「和葉、愛してる。……やっと言える」
 和葉の髪にキスをして遼一が囁いた。
 その吐息が少し震えたように感じて、和葉の脳裏に再会してからの彼との日々が蘇る。
 誤解していたとはいえ、彼に対する和葉の態度はひどかった。頑なな和葉に、彼は真実を言えなかったのだろうと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「遼一、ごめんなさい。私、ひどいこといっぱい言ったよね……」
「それは仕方がないだろう。それだけ俺が傷つけたんだから。新しい恋人の話が嘘で樹が俺の子だと知った時は、正直複雑だったよ。もちろん嬉しかったが、俺は和葉がハワイで幸せに暮らしていると思っていたから……。恋人がいなかったのなら、それだけ和葉が長くつらい思いをしたことになる」
 あの時の遼一の複雑な表情と苦しげな言葉を思い出して、和葉の胸は締め付けられる。そんなこととはつゆ知らず。和葉は彼に敵意をむき出しにした。
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