裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
「んんっ! あ、……してない。そう言ったじゃない……ん」
 素肌を辿る感覚に肌をわななかせながら、和葉は答える。
「俺以外にしたらダメだからな」
「しな……しない……」
 低い声音が和葉の脳に独占欲を注ぎ込む。途端に和葉は甘い世界に飛ばされて、自分がなにを否定してるのかすらわからなくなってしまう。
「愛してるよ、和葉、もうここで君を抱けないと思っていた。こうしているのが夢みたいだ」
「遼一、ひ、引っ越してなかったの……ここでひとりで住んでたの……?」
 喘ぐようにそう言うと、遼一が和葉への攻撃を一旦止めてふっと笑った。
「諦めが悪いだろ。でも俺は和葉以外は愛せないから、どこにいても同じだ。なら少しでも和葉を感じられる場所にいたかった。和葉と一緒に選んだ場所に」
 彼の瞳が寂しげに揺れる。
 その目に、和葉の胸が締め付けられた。ここでひとり過ごした日々は、どんなに孤独だっただろう。
 それでもその孤独に耐えて彼は和葉と和葉の家族のために濡れ衣を晴らしてくれたのだ。
 誰よりも強くて、誰よりも愛が深い人。
 和葉は彼の手を取り、頬にあてて目を閉じる。
 ずっとこの手に守られてきた。この腕が和葉を困難から救ってくれた。ここにはその時にできた見えない傷がたくさんついている。
 彼は強いけれど、寂しくないわけでも傷つかないわけでもないのだから。
「私、私も遼一だけを愛してる。あなたを忘れたなんて言ったのは嘘。胸に閉じ込めて自分でも気づかなかったけど、ずっとあなたを愛してた。もうひとりにはしないから。私がずっとそばにいる」
 強い想いを口にして、乾いた手のひらに口づける。
 この大きな手が、愛おしくてたまらない。
 もうこれ以上傷つけはしないし、今ある見えない傷もすべて自分が癒したい。
 その一心で、和葉は口づけを繰り返す。ちゅっちゅと音を立てて見えない傷を舌で辿る。
 もうあなたはひとりじゃないのだと、知ってもらいたくて。
「つっ……和葉……」
 掠れた声に名を呼ばれてうっすらと目を開くと、遼一が苦しげに眉を寄せていた。
 その目には、獰猛な情欲の炎が浮かんでいる。
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