裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
エピローグ
 どこか浮かれた雑踏を前に、HOPHOPと大きく書かれたピンクのカウンターに手をついて、啓がふぁとあくびをした。
「店長、お客さんが見てますよ」
 その隣で、仁美が彼をじろりと睨んだ。
 答える啓は相変わらず呑気だ。
「仁美ちゃんは真面目だなあ。いいじゃんべつに。誰も見てないって。ハワイの店舗では普通だよ?」
「ここは日本です。店長目当てに来てくださるお客さんもいるんだからあまり気を抜かないでくだい」
 そんなやり取りをするふたりに、和葉はくすくすと笑った。
 立場が人を作るとはよく言ったもので、社員になった仁美はメキメキと成長し、今や通常の細々とした仕事なら、啓よりも頼りになるくらいだ。
 普段はずらしてシフトを組んでいる社員三人が、午前中のこの時間に揃ったのは、月に一度のミーティングがあったからだ。
 それ自体はもう終わり、啓はこのあと一旦帰りまた夕方に来る。
「店長、もう私たちで大丈夫ですから、帰って身体を休めてください。店長がお客さんと撮った写真はSNSにあがることもあるんだから、コンディション整えてきてくださいね」
「はいはい。仁美ちゃん、どんどんかずちゃんに似てくるよね」
「私は和葉さんを目標にしてますから」
「え? ボクじゃなくて?」
 しょんぼりとして啓が帰っていくのを見送って、仁美は和葉を振り返る。
「和葉さん、私、バックヤードで在庫確認してきますね」
「うん。お願い」
 仁美が去っていくと、行き交う人でごった返してる通路からこちらへやってくる人物がいる。
 歩美だ。
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