裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 涙を堪えてそういうと、歩美がもうっと言って笑った。
「本当にお人好し。……でも、ありがとう。しばらくは日本に帰らない。パンケーキ屋がベルギー一号店を出すなら連絡ちょうだい」
 そう言う彼女の目も真っ赤だった。
「はい」
「だから今日は食べにきたの。日本で最後の食事よ。オーダーいい? シングルひとつにトッピングはローストビーフ、クレソンとマッシュボテト」
「はい、ありがとうございます……」
 と言いつつ和葉かチラリと彼女の後ろを伺い同行者がいないと確認する。HOPHOPのパンケーキは、普通より少し多めだ。
 歩美が和葉の視線に気がついて、ふんっと鼻を鳴らした。
「馬鹿にしないで、このくらいの量、私ならペロリよ」
 そして頭上にある看板を指差した。
「だいたいあの看板よくないと思う。『一枚で二人前くらいです!』なんて書かれたら、ひとりでは注文しにくいじゃない? 私みたいなおひとりさまは食べたくても食べられないし、食べてたら大食いみたいじゃない」
「た、確かに……。貴重なご意見ありがとうございます」
 勢いに押されながそう言うと、彼女はプッと噴き出してくすくす笑う。つられて和葉も笑い出した。
「じゃあね」
 パンケーキをトレーに乗せてフードコートに座った歩美は、美味しそうに本当にペロリと平らげる。共同の返却口へトレーを置くと、もうカウンターには寄らずに通路へ出た。
 振り返り、大きく手を振っている。
「じゃあね、美味しかった!」
 和葉も大きく手を振りかえす。
 スーツケースを引いて颯爽と人混みに消えていく背中はカッコいいよかった。
 いつの日か、また会える。その時はお互いにきっともっと成長している。
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