裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 だとすると、にわかにこの状況が不安になってきた。
「あの、橘さんの方は大丈夫なんですか?」
 和葉からの問いかけに、遼一がチラリとこちらを見た。
「なにが?」
「こんな風に……私を助手席に乗せて、誤解されて困る方がいらっしゃるんじゃないですか?」
 なんだか探りを入れているみたいで嫌だなと思うけれど、はっきりさせておいた方がいい。
 彼はただの義務感でしているとしても、和葉は元婚約者。意図せずに誰かを傷つけかねない。
 ハンドルを切りながら遼一が短く答えた。
「俺にそんな相手はいない」
「そう……ですか」
 ならばややこしいことにはならないと、とりあえずホッとしつつ、別の部分でもやっとする。婚約破棄から二年という期間があったのにもかかわらず彼はまだ結婚していない。
 ならばなぜあの時彼は、和葉を欺いてでも結婚しようとしたのだろう?
 彼が本気になって探せば、相手には困らないはずなのに、条件の合う人が見つからなかったのだろうか?
 さまざまな思い頭に浮かび、あれこれ考えそうになる自分の思考を和葉は強制的に遮断した。
 彼の事情などどうでもいい、今の自分には関係ない。
 気持ちを切り替えると、また別の疑問が頭に浮かんだ。
 それにしても彼はなぜフードコートにいたのだろう?
 営業時間は過ぎていて、隣のコーヒーショップも閉まっていた。NANAのスタッフルームから駐車場までの行くのに、フードコートは通らないのに。
 考えながらまたチラリと彼を見ると、遼一が口を開いた。
「千歳からの戻りだ。通りかかったら、ものが落ちる音がした」
 頭の中の疑問に、短く端的に答えられて、和葉は瞬きを繰り返す。
「そう……ですか」
 胸に複雑な思いが広がった。
 恋人同士だった頃も、彼にはよくこうやって言いたいことを先回りして答えられることがあった。
 待ち合わせの場所で彼を見つけて会えて嬉しいと思いながら駆け寄ると、にっこり笑って『俺もだよ』と言われたこと。ソファに並んで映画を観る彼の横顔に、キスしてほしいとぼんやり考えた瞬間に唇を奪われて驚いたこともある。
『どうして私の考えていることがわかったの?』
< 37 / 146 >

この作品をシェア

pagetop