裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 唐突に問いかけられて、和葉は一瞬混乱する。答えられないでいるうちに、重ねて質問が飛んできた。
「その子の父親とは正式に結婚してるわけではないのか?」
 なぜ今そんなことを?と首を傾げかけてハッとする。
 さっき保育園のインターフォン口で、樹の名前を名乗ったからだ。
 一般的に考えて結婚しているのなら和葉の苗字は変わっているはず。それなのに『寺坂』のままだったのを疑問に思っているのだろう。
 どう説明しようかと和葉は迷う。
 相手が自分の苗字になったのだと、嘘をつく?
 けれど夕方歩美に自分はシングルだと話したことが気にかかった。彼女がそれを遼一に報告すれば辻褄が合わなくなってしまう。
 考えあぐねているうちに、マンションの前に到着した。
 和葉の部屋は二階だから階段で上がる方が早いのだが樹を抱いているのでエレベーターを使う。乗り込んでからも、和葉は遼一の質問に答えられなかった。
 彼の方は答えを待ってはいるだろうが、催促する様子はない。そもそもパートナーとの入籍云々など、センシティブな問題で、答える義務はない。答えたくないと和葉が考えても不自然ではない。
 これ以上追求してこないなら、変に嘘をつくよりは、このまま黙秘で終わらせようと和葉が心に決めた時、エレベーターが到着する。
 外廊下に出て部屋のドアが見えて、和葉は心からホッとした。
 いろいろなことがあったけれど、ようやく家についた。
 車で送ってもらったおかげで、身体の方は楽になったが、精神的にはどっと疲れた。
「あれ? かずちゃん?」
 声をかけられてドアの前で足を止める。
 見回すと、啓が外階段を上ってくるのが目についた。彼も帰るところなのだろう。彼の部屋は三階で、よく階段を使っている。
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