裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 和葉は彼に声をかけて、樹を抱いたままポケットから鍵を取り出し自分の部屋のドアを開けた。
 どのみち歩実にはシングルだと言ってあるのだ。話の辻褄を合わせる意味でも、ざっと説明をしておこう。
 マンションの間取りは、入ってすぐの短い廊下を抜けたところがキッチンでその先がリビングダイニング、隣の和室と引き戸で仕切られている。面積はさほど広くはないが、引き戸を開け放つと全体を見渡せるので意外と広く感じる。ふたり暮らしには十分だ。
 今も引き戸は開いていて和室に布団が敷いてあり、おもちゃが散らばったままの状況だ。とりあえず和葉は、中に入り布団の上に樹を寝かせる。起きないことを確認してそっと引き戸を閉めた。
 振り返ると遼一は、上り口に荷物を置いて玄関で靴を脱がずに立っている。さっきと同じ怪訝な表情ではあるが、なにかを考えているようだ。啓の態度やこれまで和葉がとった行動から、事情を繋ぎ合わせているのだろうか。
 上がってもらうべきだろうか、と和葉は迷う。
 自分から頼んだわけではなくても夜遅くにわざわざ送ってくれた相手に、玄関でサヨウナラというのはあまりにも失礼な気がする。本当ならお茶でも飲んで帰ってもらうべきだ。
 といっても上がってもらって話し込むほどの話ではないし、和葉としてもあまり彼と長く話したくない。彼の方もこの状況を疑問に思ってはいるだろうが、本来は興味のない話のはずだ。
 迷った末に和葉はそのまま話をすることにして彼に歩み寄る。
「送ってくださってありがとうございました。本当なら上がっていただいてお茶でもご馳走するべきですが、今日はもう遅いのでここで失礼させてください。このお礼は後日させていただきます。それから誤解されているようですが、私は結婚していませんし、さっきの彼は私の従兄弟であの子の父親はではありません」
 最低限の情報で、彼の誤解を解こうと試みる。
< 43 / 146 >

この作品をシェア

pagetop