【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
†ジェイラスの葛藤
 アリシアが行方をくらましてから三年近く経とうとしている。騎士団では、五年間の休職が認められているため、彼女はまだ除名にはなっていない。
「殿下。護衛の候補者リストをお持ちしました」
 三日後、ランドルフは港町サバドに視察へ向かう。それに同行する護衛を決めなければならず、ジェイラスが候補者の名をあげるが、最終的にはランドルフの希望を優先させる。
「ああ、ありがとう。受け取る……って、相変わらずひどい顔をしているな」
 ランドルフに指摘され、ジェイラスはわけがわからないとでも言うかのように、紫眼を瞬かせた。
「ひどい顔、ですか?」
 ジェイラスはどちらかといえば整った顔立ちをしている。夜会の警備に立てば、警備の立場だというのに令嬢から声をかけられるほど。それなのに、ひどい顔というのは、目鼻立ちがどのような状態になっているというのか。髭だってきちんと剃っている。王太子つきの近衛というのは、見目もそれなりに求められるからだ。
「顔が怖い」
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