【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「それは仕方ありませんね。立場上、舐められるわけにはいきませんから。威厳というものです」
「威厳? というよりは、怖い顔のおっさんだな」
 まだ二十六歳だというのに、おっさん呼ばわりされたジェイラスは顔をしかめる。しかもランドルフとは同い年だ。
「まったく。あれから三年も経つというのに……」
 ランドルフのぼやきは、ジェイラスのかつての恋人――いやジェイラスとしてはまだ別れたつもりはないから今も恋人だと信じている――アリシアを指しているのだろう。
「あれから三年経ちますが、彼女は行方不明のままです」
 行方不明であって亡くなったわけではない。彼女の実家のガネル子爵家は、半ば諦めかけているようだが、失踪から七年経たなければ死亡とみなされない。それ以降は家族の申し立てで死亡扱いとなる場合もあるが、ジェイラスは決して諦めない。
「おまえはまだ、彼女を想っているのだな?」
 ランドルフが小さくため息をついた。
「当たり前です。彼女の生死がはっきりするまで、いや、彼女は生きています。彼女以外の女性と一緒になるなんて、あり得ない」
 ジェイラスが熱のこもった紫の瞳でランドルフを鋭く睨めば、彼はわざとらしくため息をつく。
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