【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「おまえもそろそろ、妻を娶れ。と言いたかったが、その様子では無理だな」
「殿下は、俺を怒らせたいと……?」
 獣のように腹の底から響く声でジェイラスが問うと、ランドルフは、怯えたようにふるふると首を横に振った。
「私を脅すのは、おまえくらいだ。おまえの父、公爵からも言われただけだ。とにかく、三日後にはサバドだ。久しぶりのサバドだしな」
 王家直轄領とはいえ、そんな手軽にほいほいと行けるわけでもない。むしろサバドは重要地域であるゆえ、王太子よりも国王が直接足を運ぶことが多かった。それでも前回の視察は二年前だった。
「おまえもサバドは行っていないだろう?」
 サバドの街でアリシアを探していないのではないか、という意味だ。アリシアがガネル子爵領に向かうには、サバドを経由する必要があるのは知っていたが、それは乗り合い馬車を使う場合に限る。
 あの日、乗合馬車の利用者名簿に彼女の名前はなかった。もちろん、それ以降も馬車名簿は確認しており、彼女が乗り合い馬車を使った形跡は、今まで認められていない。
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