【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「とにかく、おまえを今回の視察に同行させる。だから、三日くらい我慢しろ。それまでに、もう少しサバドについて調べておけ。おまえが真面目に仕事をするなら、彼女の職務規程違反の件は、こちらでなんとかしてやってもいい」
 相変わらず飴と鞭の使い方がうまい男だ。ここまで言われれば、ジェイラスに反論の余地はない。
「承知しました」
 ジェイラスはいじけた子どものような口調で返事をした。
 それから三日間は怒濤であった。ランドルフの護衛と称してサバドへと向かう。王城の留守は他の騎士らに任せる、執務も急ぎの案件については代理にまわすように根回しをした。
 そしてサバドの街へと着いたときは、慣れない潮風に鼻をひくつかせた。
 サバドは王家直轄領ということもあり、街の代表として国が指名した者を派遣させている。今の代表は、ラーリ侯爵の次男だ。優秀な文官として、一部の界隈では有名な人物だ。
 しかし街の自立性を尊重し、代表がすべてを牛耳っているわけではない。街の運営には、他にも教会と商会も関与する。最近、力のつけているモンクトン商会が街の運営においても頭一つ飛び出ているのかと思いきや、そうでもない。
 ランドルフは、代表が住まう領主館に滞在することになっている。領主館にはそういった賓客をもてなす役割もある。
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