【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
第三章

1.

 今日のすべての視察を終え、ランドルフたちは領主館へと戻ってきた。
「だから、ジェイ。おまえ、顔が怖い」
 部屋に入るや否や人払いをし、ジェイラスだけを呼び入れたランドルフの第一声がそれだ。
「俺の顔はもともとこういう顔です」
「そして私を見下ろすな。怖い。そこに座れ」
 ランドルフが顎で示された席に、ジェイラスは渋々と腰をおろした途端、疲れ果てたように背中を丸めて頭を抱え込んだ。
「それで、どうだった?」
「殿下……わかってて、聞いてますよね?」
 今日の視察先はモンクトン商会が力を入れている養護院兼学校であった。子どもたちが勉強できる環境は整っていたが、それがじゅうぶんとは言えず、教師の数が明らかに不足していた。女性教師が一人で、さまざまな年代の子の学習をみていたのだ。そして剣術まで。
「……間違いなく、アリシア・ガネルです。髪は切ってしまったようですが」
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