【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「彼女はただの記憶喪失だと思うか?」
「それは、どういう?」
「いや、私の考えすぎだ。できれば王都に連れて帰り、腕のいい医師の診察を受けられるよう手配しよう、いや医師ではなく……」
「殿下!」
 感激のあまり、ジェイラスはランドルフの手を両手で力強く握りしめた。
「顔が近い。手を放せ、ジェイ。気持ち悪い」
 そう言われても、ジェイラスはランドルフの手を放そうとはしない。
「おまえの恋人、アリシアは第二騎士団でも優秀な女性騎士だと聞いていたし、今日の指導を見てもそれがよくわかった。彼女を失うのは、騎士団の、いやこの国の損失だと、そう考えただけだ」
 嫌がるランドルフに、ジェイラスは熱い眼差しを向け続ける。
「と、とにかく。この件に関しては、私のほうでもなんとかする。だからおまえは、ガネル子爵に手紙を出しておけ。いいな? って、それよりも早く、この手を放せ」
 これ以上嫌がらせてアリシアとの接点を失ったら取り返しがつかない。ジェイラスはそう思い、やっと手を解放した。
< 119 / 375 >

この作品をシェア

pagetop