【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 考えてみたら、ジェイラスの頭はアリシアの膝の上にのっていた。眠っていながらも苦しそうに眉間にしわを寄せている姿がかわいそうに見え、彼の濃紺の髪を梳くようにしながら、やさしく頭をなでていた。
 すると彼の表情がやわらぐのだ。
 そんな発見をしつつも、アリシアは彼が目覚めるのを待った。
 アリシアとしては、弟や妹が眠れないと泣くときにいつもやっていたことだったので、特別、意識したわけではない。
 だけどジェイラスにとってはそうでもなかったのだろう。
『すまない』と謝罪しつつも『俺は眠りが浅いほうで、最近、なかなか眠ることができなかった』と、そんなことまで言い出した。
 さらに団長になったばかりで気も張り詰めていたようだ。若くして上位職に就くというのは、羨望と嫉妬の眼差しを向けられる。
 アリシアが彼を尊敬していたのも、自分とさほど変わらぬ年で、団を率いる立場に就いていたこともあげられる。
 だが、思い返してみれば、それがきっかけだったのかもしれない。
 ジェイラスは、アリシアが執務室を訪れるたびに、決まって三十分ほど仮眠をとるようになった。しかも、いつもアリシアに膝枕を頼み、頭をなでてほしいとねだるのだ。アリシアにとっては大きな弟ができたような気分だった。
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