【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい

3.

 港では、ギニー国の商人たちが、どのような荷物を運んできたのかを説明する。また、立ち寄り港として、毎日、さまざまな船を受け入れていることも。そのため港は活気に溢れている。物も人も金も、めまぐるしく動いている。
 商人の彼らは、共通語ではなく自国の言葉を使う者が多い。市場の喧騒の中、彼らの抑揚の強い声が響き合い、聞き慣れない単語も飛び交っている。
 だから共通語以外にも、ギニー語や各国の言葉を理解する必要があり、モンクトン商会ではそれに長けた者を何人か雇っていた。
 ギニー国の商人がギニー語で商品の説明を始めたため、それをシアが共通語へと訳してランドルフに伝える。しかしランドルフの様子からは、彼は通訳がなくてもギニー語を理解しているようにも見えた。
 それでもギニー語をわかっているのは王太子くらいで、彼の後ろに控えている者たちはシアの声に耳を傾けている。
 モンクトン商会は、農作物から加工品、魔石やその道具まで、多岐にわたる商品を扱う。農業大国ギニー国からは、黄金色の穀物や瑞々しい果実が届き、それらを商会が加工して輸出する。
 立ち寄る船の補給物資としても、これらの品は飛ぶように売れる。だが、物量が増えるにつれ、サバドの工場だけでは加工が追いつかない。そのため、商会はギニー国での加工を視野に入れ、関係者を少しずつ派遣しているのだ。
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