【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 アリシアがモンクトン商会の会長夫妻と深い絆で結ばれていることは明らかだ。彼女がこうして大切に思われている姿に誇らしさを感じると同時に、自分をまるで覚えていないことへのもどかしさに胸が締めつけられた。
 アリシアが眠る部屋を後にしたジェイラスは、ランドルフの元へと向かう。彼はまだ、この屋敷にいる。急いで移動するのはかえって危険だと判断したのだろう。
 屋敷で最も安全な部屋といえば、プライベートな空間を除けば、会長の執務室だ。
「ジェイラス。彼女の様子は?」
 部屋に入るなり、ランドルフがそう尋ねてきた。その声には普段の威厳に加え、微かな不安がにじんでいる。彼の前に座るボブもまた、顔を曇らせていた。
「必要な処置を終えました。傷は深くありませんので、一か月も経たないうちに回復するでしょう。ただ、毒の影響を受けていますので、解毒が必要です」
 ジェイラスの報告に、ランドルフは小さく頷いた。
「なるほど。状況はわかった。さっきから会長が平謝りだが、こちらの騎士よりもモンクトン商会の者が良い動きを見せたと褒めていたところだ。この屋敷に侵入者が入り込んだのは、私がいたからだろう。となれば、それを防ぐべきは君たちだった」
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