【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 ボブの視線は、ジェイラスの心を見透かすようだった。魔法による記憶喪失という言葉が、ジェイラスの胸に深く響く。
 いったい、それはどういうことなのか。
 そのとき、扉を叩く音が響き、サマンサが現れた。
「シアさんがお目覚めになりました」
 ジェイラスはサマンサに手伝ってもらいながら解毒薬を作って、アリシアが休む部屋へと向かった。
 扉をノックする瞬間、柄にもなく緊張した。手は震えていたかもしれない。
「……はい」
 部屋から彼女の声が聞こえ、心が揺さぶられた。
「ジェイラス……さん?」
 寝台の上で彼女は身体を起こしていた。しかし、その足元には何かがある。ぬいぐるみかと思ったら子どもだ。
 彼女の傷の具合を確かめながらも、ジェイラスはしがみついている子どもから目を離せなかった。
「息子です。そこで眠ってしまったみたいで」
 アリシアの声は弱々しかったが、息子を見つめる目は温かかった。
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