【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 彼女が気を失っているうちにやってきて、そのまま母親にしがみついて眠ってしまったらしい。だがそのままにしておけば風邪を引いてしまうだろう。
「この子の名前を聞いてもいいか?」
 できるだけ平静を装ったつもりだ。それでも内心は期待と不安で押しつぶされそうだった。
 もしかしたらジェイラスの子かもしれない。いや、この子の特徴からいっても、間違いなくケンジット家の血を引いている。
「ヘリオスといいます」
「ヘリオス……」
 その名を聞いた瞬間、ジェイラスの胸に熱いものがこみ上げた。
 間違いない。ヘリオスはジェイラスの子だ。そして、アリシアは無意識のうちにその名を覚えていたのだ。
 三年前、恋人同士の戯れで、一度だけ、子を授かったらどんな名前をつけたいかという話をしたことがあった。
『……ラスと似た名前がいい』
 いつもの情交のあと、少しだけ恥じらいながら彼女はそう言った。シーツにくるまり、頬をほのかに染めた彼女の姿が、今もジェイラスの記憶に焼きついている。
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