【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 シアは失われた記憶に手が届くようなもどかしさを覚えた。
「シア嬢……? どうした? 顔色がよくない」
 ジェイラスの心配そうな声に、シアは我に返る。
「あ、ごめんなさい。なんでもありません。ヘリオス、帰るわよ」
「や。ラシュ、いっしょよ」
 意地でも歩かないという意思表示なのだろう。ジェイラスの上着をしっかりと握りしめている。
「そういうことらしい。ここは素直に俺に送られてくれないか?」
 ジェイラスの声には、シアを安心させようとする優しさが込められていた。彼に甘えたい気持ちと、遠慮すべきだという葛藤の間で揺れた。なぜこんな感情が湧くのか、シア自身もよくわからない。
「まま、かえるよ」
 ジェイラスに抱かれたまま、ヘリオスが偉そうに言う。その天真爛漫な声に、シアは笑いを抑えきれなかった。ヘリオスがこんなにも楽しそうなら、それでいいのではないか。
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