【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「それでも、やはり不安になります。私がどんな人間だったのか。もしかして犯罪者かもしれない、逃亡者かもしれない。そう考えたら怖くて……。だから私は、本当にここにいていい人間なのだろうかって……」
 部屋は静けさに包まれ、ミートパイの焼ける香りとともに、シアの言葉が重く響く。
「王太子殿下が養護院に視察に来られたときから、誰かに見られている感じがしたのですが……ジェイラスさん、ですよね?」
「す、すまない」
「ジェイラスさんは、どうしてそこまで私を……?」
「うっ……」
 ジェイラスは言葉を詰まらせ、きょどきょどと視線をさまよわせる。
 シアは自分の不安を吐露する勇気を振り絞った。
「私、自分が誰なのかわからないから、怖いんです。もし、私を知っているなら、教えてくれませんか?」
「……だが、君には今の生活がある。例えば、真実を知って、この生活を手放すようなことになってもいいのか?」
 ジェイラスの言っていることも理解できる。記憶がないのも不安なのだが、記憶が戻ったときのことを考えても心配になるのだ。
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