【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 コリンナたちのことを忘れてしまうのだろうか。養護院や学校の子どもたちのことを覚えているだろうか。教師を続けられるだろうか。
 そんなことを想像すれば、胸が苦しいくらいに締めつけられた。
「俺は……君に思い出してもらいたいと願いながらも、その結果、君から今の生活を奪うことになるのが怖い」
 ジェイラスの声は、痛みを帯びていた。彼の気持ちが、シアの心に深く響く。
 記憶がないことも、取り戻すことも、どちらも怖い。
 だが、シアは子どもたちにいつもこう言っていた――未来がわからないからこそ、今を精一杯生きるのだと。
「ジェイラスさん。未来のことは誰もわかりません。だけど、そのわからない未来をよりよいものにしたいから、私たちは今をもがいているのではありませんか? 私は、ヘリオスがいれば幸せです。でも、この子に父親がいるのならと、最近考えるようになって……」
 フランクとじゃれ合っていたヘリオス。ジェイラスに甘えていたヘリオス。その姿を見て、父親の不在を埋めようとしているのかもしれないと、シアは思わずにはいられなかった。
「わかった……。君が記憶を取り戻したら、今と生活が大きく変わるかもしれない。それでも、いいんだな? 後悔しないな?」
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