【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 まるで過去を悔やむように吐露するジェイラスの姿を見れば、シアの心がしくしくと痛み出す。彼がどれほどの思いを抱えてきたのか、それが伝わってくる。
「サバドの養護院での取り組みを聞いたとき、そこで子どもたちに勉強を教えているのはアリシアではないかと疑った。こうして彼女と会い、話をして、剣を交わらせ、シアがアリシア・ガネルであると確信している」
 ジェイラスは紫色の瞳で真っすぐにシアを見つめた。シアもすべてを見透かすようなこの視線から、目が離せない。
 だけどこの眼差しを知っている。ときにやさしくて、ときに甘えたがりで、ときに心強い。
 記憶の断片に触れるようなもどかしさが、シアの心に渦巻き始める。
「会長にはアリシアを保護してもらった恩義を感じている。だが……アリシアを返していただきたい」
 切なさがにじむ声で懇願され、シアの心臓は痛いくらいに激しく動いていた。
「ジェイラスさん。勘違いしないでいただきたい。シアを返すも何も……。私たちは行き場のないシアを、モンクトン商会で雇い、生活の場を与えていただけ。彼女が本来の場所に戻りたいというのであれば、それを止める権利など我々にはありません」
 それは、今後の人生をシア自身で選べと、そう言っているかのよう。
< 221 / 375 >

この作品をシェア

pagetop