【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「だからシアにはシアにしかできないことをやってほしい」
 きつく握りしめた拳が、かすかに震え始めた。その手をやさしくコリンナが包み込む。
「シア。あなたは勇敢な女性よ。三年前に私たちを助けてくれた。あのとき、あなたが来てくれて、どれだけ心強かったかわかる? それに先日だって王太子殿下を助けたでしょう?」
 あのときは無我夢中だった。
 モンクトン商会主催の晩餐会で王太子が暗殺されるようなことがあれば、商会の未来にも影響すると思ったからだ。
「学校の教師はあなたの教え子が引き継いでくれる。だけど、私を暴漢から助けてくれたり、王太子殿下を身体をはって助けたりするのは誰でもできることではないわ。ましてヘリオスの母親は、あなたしかいない」
 本当の自分を知りたいと思う気持ちと、ここで今の生活を続けたいという思いが激しくぶつかり合う。
 それはジェイラスの言葉で過去を知りたいと思い、ずっとずっと悩み続けてきたこと。それでもヘリオスには父親が必要だと感じたから、本当の自分を知りたいと口にした。だけど、怖い。
 ――変化を恐れていては前には進めない。
 そう言ったのは誰だったろう?
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