【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「はい、確認しております」
 口に毒を隠し、尋問前に自害する者もいる。だが、この男は雇われの暗殺者だ。殺される覚悟はあっても、自死を選ぶような人間ではないだろう。
 ジェイラスはそう確信していた。
「開けてくれ」
 牢番が鍵を外し、鉄格子の軋む音が地下室に響いた。
 ジェイラスとホーガンが中に入ると、男は怯えた様子で壁際まで芋虫のように這う。
「俺たちの質問に素直に答えるなら、悪いようにはしない」
 ジェイラスの言葉をホーガンが訳して男に伝える。意味は通じなくとも、ジェイラスの地の底から響くような声を聞かせるのも、脅しの一つとなる。
 ホーガンの話を聞き終えた男は、コクコクと首を縦に振った。恐怖に支配された目に、わずかな希望が灯る。
「ほどいてやれ」
 ジェイラスが牢番の騎士に、男の猿ぐつわを解くように指示を出す。
「あっ……あぁ……ゴホッ、ゴホッ……」
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