【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 女性のうちの一人が何度も頭を下げる。少し癖のある茶色の髪は艶やかに波打ち、控えめな化粧に宝石のような青い目が映えている。見るからにお金持ちの家の人、という感じがする。女性が手を繋いでいる女の子は、その女性にそっくりだ。髪の色も目の色も同じ。ただ髪の毛は兎の耳のように二つに結わえてあった。
 もう一人の女性は、よく見ると年配の女性であった。
「私はモンクトン商会の者で、コリンナと申します。娘のシェリーと侍女のサマンサです」
 母子の母親のほうがコリンナで娘がシェリー。そして年配の女性が侍女でサマンサという名のようだ。
「なんとお礼を申し上げてよいのやら……あの……お名前を……」
 モンクトン商会といえばこの国でも名の知れた大きな商会である。
「いえいえ、名乗るほどの者でもありませんから」
 一度は言ってみたかった台詞ではあるものの、ここで名を名乗ってしまってそこから足跡がつくのを避けたかった。置き手紙に気づいたジェイラスは、アリシアを追いかけてくるかもしれない。彼に見つかる前に、実家にまで戻りたかった。少なくとも、母親はアリシアの味方をしてくれるはずだ。
「そんな……ですが、何かお礼を……」
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