【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 もう一つ手にとると、ジェイラスが微かに笑った。
「ああ、すまない。それはアリシアが好きだった焼き菓子だ。いくらでも食べられると言って、一人で一缶食べたことがあった」
 そう言った彼の目線は、どこか遠いところを見つめている。
 だがそんなことを言われてしまえば、シアもとたんに恥ずかしくなる。
「……明日、ガネル子爵夫妻が、こちらに来られるそうだ」
 ジェイラスの言葉に、シアの心臓がドキンと跳ねた。つまり、アリシアの両親だ。もしかしたらシアの両親かもしれない。
「会ってもらえるだろうか?」
 そうやってシアの意思を確認してくれるのは、彼のやさしさなのだろうか。
 会いたいけど会いたくないという矛盾する気持ちが、胸を締め付ける。だが、記憶を取り戻したいと願ったのはシア自身。
 だけど本当にシアはアリシア・ガネルなのか。そうでなかったらどうなるのか。
 知りたいと思いながらもどこか怖く、不安が波のように襲い掛かってくる。
「……シア?」
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