【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 シアは不安になり、ちらちらとジェイラスに視線を送る。それに気がついた彼が、ガネル夫妻にソファに座るようにと促した。
 シアにとって、この状況はひどく気まずかった。アリシア・ガネルだと証明された今、目の前の二人が両親だとわかっても、記憶は曖昧なまま。隣にいるジェイラスとの関係は、さらに不確かだ。
 腰を落ち着けたところで、すかさず先ほどの侍女がお茶を用意して四人の前に置いた。白い湯気がゆらゆらと立ち上り、部屋に穏やかな香りを広げる。
「何から話せばいいでしょうか……」
 ジェイラスが静かに切り出した。
「できればアリシアがこの三年間。どうやって過ごしていたのかを……」
 答えたのはガネル子爵。シアと同じキャメル色の瞳には安堵の光を宿している。だが、空白の三年間を埋めたいという切実な願いも感じられた。
 シアは、三年前サバドで目が覚め、そこで自身に関する記憶を失っていたところから話し始めた。モンクトン商会での生活、養護院での教師としての日々、ヘリオスの誕生。言葉を紡ぐたびに両親の目が潤む。
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