【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「いやっ」
 アリシアは、ドンとジェイラスを突き放す。突然のことに驚く彼が力をゆるめた隙に、その身体の下から抜け出した。
「ジェイラスさんは、過去のアリシアばかりを追いかけている」
 乱れた寝衣を急いで直し、息を整えた。
「おやすみなさい」
 シアはそれだけ告げると、その場から逃げ出した。
 ジェイラスが愛しているのは過去のアリシアだ。シアに触れながらも、昔のアリシアを見ている。
 同じ人間かもしれない。だけど記憶のないシアにとって、それは虚しく悔しいもの。
 こんな醜い感情に支配されている姿を、ジェイラスに見られたくなかった。
 彼に対する気持ちを自覚してしまったから、なおさらだ。彼の隣に立つ資格が欲しいと願ってしまう。
 寝室の扉を開ければ、ヘリオスの愛らしい寝息が聞こえてきた。寝台に滑り込み、息子の小さな温もりに寄り添う。
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