【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 だが、護衛として雇われるのであれば、そこはきっちりと線引きすべきだ。先ほどまでは命を救われた者と命を救った者の関係であったが、雇用主と使用人の関係になるのだから。
「ありがとうございます。そうなると、やはり名前をお聞きしておかないと」
 コリンナが美しい笑みを浮かべる。まるでアリシアの名前を聞く口実を得たことに満足するように微笑む。
「シアと申します。王都には仕事で来ていたのですが、辞めて田舎に帰るところです」
 やはり、本当の名前を教えるのに抵抗があった。ここを離れるにあたって、アリシアとしての足跡を残したくなかった。だが、シアだってアリシアの名前の一部だし、親しい者はそう呼んでいる。
「わかりました。シアさんもいろいろと訳ありのようですね。これ以上、深くは追求いたしませんが、先ほど私たちを助けてくださったこと、そして鳥にも好かれている様子から判断して、信用に値する人間だと思っております」
「ありがとうございます」
「ですが、もし……気が変わったときには、もう少しあなたのことを教えてくださいね」
 片目をつむって笑顔を向けるコリンナには敵わない。
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