【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 たまに感情が爆発しすぎて、自分が抑えきれないときもある。記憶がなくて不安なアリシアに対してその気持ちをぶつけてしまったのは、少しだけ反省した。
「いいえ……今だけですから」
 こうやってアリシアが髪を梳くようにして頭をなでてくれるのは心地よい。一日の疲れが、彼女の触れる指先で溶けていくようだった。
「でも、緊張しますし。やはり、怖いと思います」
「記憶のことか?」
「はい。記憶が戻ったらどうなるのでしょう?」
「そうだな。それは俺もわからない。だけど、俺はシアの側から決して離れない」
 彼女は困惑したような笑みを浮かべつつ、いつまでもジェイラスの頭をなでていた。
 だからジェイラスは、彼女が記憶を取り戻すまでの残りわずかな時間を、穏やかに過ごしてもらいたかった。
 だというのに、その知らせは突然やってきた。
 エイミが記憶操作の呪詛の解除を行うと宣言した前日だ。呪詛解除にはジェイラスも立ち合うから、こんもりと積まれた書類をさっさと終わらせようと、そう思っていたとき。
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