【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 そもそも王城内に出入りできる人間は限られている。だから庭を解放しているし、そこに出ることをアリシアに許可した。
「あれじゃない? やっぱりジェイのことが嫌になって逃げだしたとか?」
 エイミの明るい声が響き、ジェイラスは彼を睨みつける。
「まぁ、三年前もジェイラスのところから逃げている前科があるからな」
 ランドルフの言葉を聞いたジェイラスは、奥歯を噛みしめた。
「なるほど。三年前のあれはそういうことか……」
 ブルーノが腕を組み、当時を思い出すように目を細くする。
「いや、だが。三年前の彼女は追いつめられたような、切羽つまった様子で騎士団を辞めると言っていた。今の彼女からは、そんな様子は伝わってこなかった。それに息子がいるだろう? 息子を置いてまで、彼女が逃げるとは考えにくい」
 ブルーノの冷静な分析に、ジェイラスはわずかに安堵した。だが、エイミが再び茶々を入れる。
「息子を置いて逃げるほど、ジェイが嫌になったとか?」
「師匠はお口チャックでお願いします」
 ホーガンがやんわりとエイミを注意すると「あっ?」と濁った太い声で睨み返す。まとまるはずの話が、どんどん脱線していく。
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