【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 だから彼らは、一般民が乗るような乗り合いの馬車は襲わない。襲ったところで盗れるものなど限られているため、体力の無駄である。
 モンクトン商会はそれをわかっているのか、馬車の内装は素晴らしいのに、外装はいたって普通だった。乗り合い馬車と同じような、そんな簡素のものに見える。
 金持ちが街と街を移動するような長旅をするときの、野盗避けの常套手段だ。
 だが、そんな彼らだって、街中を移動するときは家紋の入った豪華な馬車で見せびらかすようにして移動する。
 そうやって状況に応じて使い分け、自分たちの価値をどこでどう見せるかも戦略の一つとも言われている。
 その日、太陽がだいぶ傾き空が橙色に染まる時間帯、そろそろ今日の宿場町に入ろうとしていた頃。
 コツコツコツと馬車の窓を叩かれる。
「ぽっぽちゃん、ぽっぽちゃん」
 最初に気づいたのはシェリーだった。
「どうしたのかしら?」
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