【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい

4.

 身体が落ちていく浮遊感は、奇妙な感じがする。もっと速く落ちるかと思ったのに、ふわふわと空を漂うような。
 ――ガシッ。
 シアの身体はしっかりと誰かに抱きとめられた。
「まったく、無茶をする。俺が下にいなかったら、どうするつもりだったんだ?」
「そんなの、あたしさえいれば、まるっと解決でしょ!」
「だって、ジェイラスさんが来てくれると、信じていましたから」
 シアの言葉に、ジェイラスの目が驚きで丸くなり、すぐに柔らかな光を宿す。
「……シア」
「ちょっと。あなたたち。完全にあたしを無視しているわね」
 先ほどからジェイラスの隣で騒いでいるのは、もちろんエイミだ。彼の魔法によって、四階から落下するシアの身体の衝撃を抑えていた。それをジェイラスが抱きとめた。
「いいから! おまえはアレをなんとかしろ」
 ジェイラスが上を見上げると、窓から身を乗り出して下を見ているフランクの姿が視界に入る。
「エイミさん。彼は呪具師です」
「なんですって! そんな美味しい人物が存在しているなんて……ホーガン、捕らえるぞ」
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