【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「そうだな。今日くらいは父に感謝しておくか」
 何よりも初夜と呼べるような記念すべき日なのだ。
 広間の喧騒から戻ってきた後、アリシアは侍女たちの手によって湯浴みをし、薔薇の香油で肌を磨き上げられ、透けるような薄絹の寝衣をまとった。そして寝台の柔らかなシーツに座り、ジェイラスを待っていたのだ。
「我が家の侍女たちは、腕がいいな」
 ジェイラスの視線が、アリシアの全身をゆっくりと愛でる。その目に宿る欲望に、アリシアの頬が熱くなった。
「シア……俺がこの日をどれだけ待ち望んでいたか……」
 ジェイラスの声は低く、抑えきれない情熱を帯びていた。まるで繊細なガラス細工に触れるように、彼の指がアリシアの頬をなぞる。その熱に、アリシアの身体が小さく震える。
 記憶が戻ってからというもの、毎日がめまぐるしく過ぎていった。それはもちろん二人の結婚式のためでもあるし、騎士団の仕事もあったからだ。
 ボブやコリンナには手紙を定期的に書いており、近況を伝えるのも忘れていない。
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