【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 引き継ぎの挨拶をしようと顔を出した瞬間、ランドルフからそう声をかけられた。まだジェイラスは何も言っていない。扉を叩いて返事があったから、その扉を開けただけ。
 蜜月中の二人だからそうだろうとは思っていたが、傷心のジェイラスにしてみればなかなか心がえぐられるものがある。
 はだけたガウン姿のランドルフの膝の上には、同じようにガウンを羽織ったクラリッサが座っており、王太子手ずから彼女に食事を「あ~ん」と与えているところだった。
 時間が止まったかのように立ち尽くすジェイラスに、ランドルフもクラリッサも、何か察するものがあったらしい。
「おいおい、ちょっと待て、ジェイラス。クラリッサ、悪い。そちらで着替えを」
「あ、はい」
 クラリッサも慌てて立ち上がり、ガウンの合わせ目を押さえるかのようにして隣の部屋に姿を消す。
「どうした? 何があった?」
「何もございませんが?」
「いや、何もないという顔をしていない……もしかして、振られたのか?」
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