【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 ランドルフにとっては冗談のつもりだったのだろう。しかし笑えない冗談だ。
「……ま、まさか本当に振られたのか?」
「振られてはおりません……ただ、彼女が……騎士団を辞めて……実家に帰ったようでして……」
「お、おい……リシィ、リシィ」
 ランドルフは混乱したように、クラリッサの愛称を呼び続けた。
 着替えを終えたクラリッサが姿を現したのはそれから五分後のこと。乱れた髪も結い上げ、ドレスは簡素でありながらも人前に出ても恥ずかしくないもの。先ほどのガウン姿であれば、いくら護衛のためとはいえ、目のやり場に困ってしまう。
 王太子夫妻の甘い蜜月のひとときが、ジェイラスの恋の相談室へと変わった。しかし、ジェイラスの話を聞いた二人も、なぜ彼女が騎士団を辞めて実家に帰ったのか、さっぱりわからないと言う。
「よっぽど……ジェイラスと結婚したくなかった……とかかしら?」
 そのようなことをクラリッサから言われ、この世の終わりのような絶望的な表情を浮かべるジェイラスを、ランドルフが慌てて宥めた。
「とにかく、早く彼女の足取りを追え。私たちのことは他の者に任せればいい。どうせ私たちはこの部屋から出るつもりはないからな」
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