【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「そうだ」
 ボブはゆっくりと頷き、動揺するシアを励ますように言葉を続ける。
「あの養護院は身よりのない子どもを養育する施設だが、同時に学校に通えない子どもたちに学ぶ場を提供している」
 この国では、学校に通えるのは貴族や裕福な家の子弟が中心だ。入学金や授業料を払えば誰でも通えるとはいえ、貧しい平民の子にはその機会がない。
 それを変えたのが、モンクトン商会が始めた養護院での授業だ。学びたいという意志があれば、誰でも通える学校。
「そのかいがあってか、このサバドでは犯罪に手を染める子どもの数が大きく減ってきた。サバドで学んだ子が王都や他の街で活躍しているという話も聞くし、モンクトン商会でも立派な働きをしてくれている。そんな話が王太子の耳に届いたらしく、ぜひ授業の様子を見たいとのことだ」
 意気揚々と話をするボブに対し、シアは自信なさげに背中を丸める。
 そもそも王太子だなんて、雲の上の存在だ。今までの人生、これからの人生も含めて、絶対に交わらない世界線で生きている人だと思っていた。
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