残念ハイスペ女子なんて 言うな
補足 2
この日 わたしたちは限られた時間を無駄にしないためにも思いつくやりたいことをやろうと約束した
売れっ子芸能人なみの分刻みのスケジュールをこなした(おおげさ)
時間なんて足りないのはハナからわかってた
それでもそんなこと考えてる余裕なかったし
充実した楽しい時間のこんなにも早く過ぎていくことに恨めしいとさえ思った
楽しいのに『やだ』って思う自分を押し殺してた
時間なんて止まればいいのに…なんて思ってた
時間止まらなくてもフミアキが傍にいればいいだけなのに…そんなこと考えてしまう自分がいた
わたしはどうしてもフミアキに言っておかなきゃって思ってることがあった
「あのさ、転校して そこで好き子できたら本気になれよな もう壁なんか作らないだろ? 今のフミアキがホントのフミアキなんだからな!」
「いやだ…なんて言わんし言えないわ ネオンが教えてくれたようにおれも全力で日々を楽しむわ」
「わたしじゃないだろ? アンだろ? お忘れ?」
「ハハハ そうだったな」
「奇妙なもんだよね きっかけなんてなんなのかわかんないもんだね」
「だよな だったら運命ってやつか? なんでも運命とか言ってたら安売りぽいけどな」
「だったらわたしにはわかる わたしが動いたからだ… もしかしたら動かされたかもだけど」
「そうだな 確かにネオンが開いた 今のおれたちだよな」
「感謝しろ?」
「してるわ」
「わたしも」
こんな素直に話せることあるんだって思えた
「恋ってさ 終着点なんなんだろ…」
「そうだよな おれたちまだ高校生だし」
「小説や映画やドラマでも恋ってどうやって終わってるのか説明してんのかなー?」
「わかんねーわー」
「ずっと一緒にいれるなら答えも出るかもだけどね」
「それな」
「それなで片づけんな」
わたしのツッコミにお互い顔を合わせて笑う
「あとさー」
「ん?」
興味深そうにわたしを見つめるフミアキ
「ひとつ気づけたことある」
「へぇー、なに?」
「うん、好きってこと」
「……。」
「会えんかったときモヤモヤしてた」
「……おれも」
「会いたいって思った」
「………おれも」
「このまま会えないのかな?って思ったとき『いやだ』って思った」
「……。」
「だからきっと好きなんだって」
「おれはわかってたけどな」
「へぇーむかつく」
「んだよ、それ」
「なんでも知ってるふりするから なんも知らんくせに」
「すき」って言うわたしに
「好き」って返してくるフミアキ
「あー、スッキリした」
「おれも」
「好きっていいな」
「いいな」
「これからもまたこんな気持ちなんのかなー?」
「だれと?」
「…………しらね」
「……。」
しーーーんとなった 会話がとまった
いっそこのまま時間も止まればいいのにって思った
「ネオン…」
「がんばれな、フミアキ 青春あきらめんな」
「お、おう」
なにもかもがもどかしかった いろんなこと知ってるわたしたちだけど それ以上に大事にしたいものがあった
「いつか、いつかどんな形であれ再会するときがあって、そんときのわたしたちがどんな形であれ成長してて、んで…まだ…好きだったら、恋を再開しよ?」
「それはちょっと違う」
「なんで?」
「恋は終わらんだろ? ずっとずーっと続けてたらいいじゃん? そりゃ会えないけどさ 恋だって見えてるもんじゃないだろ? 色も形もない、だからおれとカノンの意識のもんじゃん?」
「そんなに強くいれるんかな…わたしたち」
「わからん お互い相手を越えて好きになれる人ができたら それはそれで真剣に恋すりゃいい」
「うん」
「それまでおれはネオンのこと好きなおれを信じるわ」
「あ、それわたしが言おうと考えてたのに」
「早いもん勝ち おれにも言わせろ」
そう言って微笑むフミアキ
「アンもね、成長してくの わたしたちみたいに恋に悩んで…」
「あぁ、『アンの愛情』だな ギルバートへの恋心をひたすら認めなかった。今ならなんかわかる話だわ」
「親友だと思ってたからね 親しくなりすぎるとそれが恋って気づけなくなる ほんとは愛おしいのに…
だったらわたしたちも同じ道進んでるんじゃない?」
「ネオン…おまえ結構大胆なこと言うのな?」
「えっ…」 言われて顔が赤くなってくのわかった
思ってること咀嚼しないでそのまま出てた
「でもな、本気で嬉しいわ 今のおれたちは『これしかない』って幻想に憑かれてるんかもしれん でもこんなこと思えるなんてそうそうないって思う」
「わたしも 放っておいたらなに言ってんのかわかんなくなる感じ 衝動? 抑えがきかないし」
「言いたいこと言ってスッキリしたいんじゃね? だって…」
「だって…会えなくなるし…だよね」
黙り込む二人 現実が二人の想いを奪い取ったかのように
「かあさんおれに謝ってた おれたち子どもに負担ばっかかけてるって… おれ、それにもなんも言えなくなった かあさんにはネオンのこと言ってない でもなんか感づいてるんだと思う ここんとこ弟たちよくみてくれてたりしたし」
「うん きっと気づいてると思う わたしのことじゃなくてもフミアキが恋してるんじゃ?って
わたしのこともママはなんとなく気づいてたもん」
「きっとね、それは同じ道通って来てるからなんじゃないかなって思うの ママたちも恋して来てるハズだから」
「だからフミアキにつらい思いさせてるって感じてるんだよ」
「うん… かあさんもわかってるんだと思う 振り回してるって。 今みたいになっておれだってやだって気持ちある、けどさ やっぱ弟たちのこともあるし かあさんが寂しいって気持ちもわかる なによりおれにはまだまだ先があるからさ…」
「優しいな フミアキ…」
「そんな言い方すんなよ 嬉しくもなんもない 自分のことより優先してることあるなんて」
「……でもわかってんじゃん フミアキがやんなきゃなことだって」
「だからやなんだよ なんでもわかったふりしてるみたいで 正直じゃないんかもしれん、おれ」
「でも、それだって今のフミアキが全力でやんなきゃなことだってわかってんだろ… だからきっとそれにも嘘はついてないんだよ 正直なんだと思う」
「悔しいな こんなことネオンに諭されてるなんて 自分じゃわかっててもどうすることもできん」
「だからさ、大人になろ? わたしたち…
もう少しがんばってさ?」
「大人か… そしたらなんでも自分で決めれるんかな…」
「それはわかんね… けどさ決めてかなきゃいけないんだと思う そん時に間違わないようにがんばるしかない!!」
「やっぱそれもネオンだわ」
どんな会話も最後は笑ってたい
ずっとずっと楽しいの延長が続いてほしいから
この先どうなるかなんてわかんないから…
それに、明日はいよいよ引っ越しの日だったから…