呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
「さっき言った条件というのは、エルが考えているようなふわっとしたものではダメなんだ。他人が心の内側で考えている事、思っている事にまでは反応できないんだよ。人が他人の心の内を覗き込めないのと一緒でね」
エスティリオがラシェルにも分かるようゆっくりと、噛み砕いて説明してくれる。
「具体的に言うと、例えば『一週間後』みたいな時間や、コレをしたら、という行動。或いはワード。エルの場合は恐らくワードだと思う。本来の名前や身分を言われると発動するような条件を付与されているんだと思う。それが名だけなのか、身分だけなのか、それとも組み合わせて言われた場合だけなのかまでは分からないけど」
「それじゃあ……」
「俺がうっかり口を滑らせなければ大丈夫だよ」
「そうだったのね」
そんなことなら、もっと早くエスティリオに相談出来ていたのに。
呪いについて詳しく知ることは許されないのだから、仕方がなかったのだけれど。
具体的に説明してもらえるとほっとして、急に体の力が抜けてきた。
「エスティリオが魔塔主として現れた時、どうしようかと思ったわ」
当時を思い出して、ラシェルは力なく笑った。
「本当は魔塔主になる少し前から、エルが偽名を使って別人になりすましているっていうことには気付いていたんだ」
「え?」
「農場からの書類に、エルの筆跡があったから。姿は変わっていても、話し方も笑い方も、所作も全然変わっていないよ」
好きな食べ物もね、と付け加えられた。
そんなに前から知られていただなんて……。
「何故エルが本当の自分を隠しているのか、俺に教えてくれないのかって、ずっと探っていて。呪いにかけられているんじゃないかというところまで辿り着いて、それでキスしたんだよ」
「ええと、それとなんの関係が?」
「エルの中にある僅かな魔力。ずっとおかしいと思っていたんだ。魔力のない人が、ある日突然魔力が宿るなんて聞いたことがないからね。そこで俺が立てた仮説が、魔毒蟲を飲んだんじゃないかってこと。俺はエルの中にいる魔毒蟲が持つ魔力を感じているんだって。だから確かめることにした」
まだ分からないラシェルが小首を傾げると、エスティリオはクスッと笑って目を細めた。