呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
でも今なら、言ってしまっても大丈夫だろうか。「受け止める」と言ったエスティリオの言葉を信じてもいいのだろうか。
いつの間にか大きくなったエスティリオの身体。その胸にすっぽりと収まると、不思議な程の安堵感がある。
エスティリオに身を委ねたまま、ラシェルは思いを口にした。
「私が……私が何をしたっていうの? ただ魔力が無かったというだけなのに。ただそれだけなのに、何故こんな目にあわなければならないの? 魔力がなければ人ではないの?!」
「エルは何も悪くない。悪くないよ」
「うんと少なくても、でも、帝国にだって何人もそういう人がいるの……いるのよ。どうしてお父様は私を否定するの? それとも私と同じように、魔力の無い人は自分の民ではないって思っているの?」
涙でエスティリオのローブが濡れていく。嗚咽を漏らすラシェルの背を、落ち着くまでの長い時間、エスティリオはずっと摩ってくれていた。
「ごめんなさい、エスティリオ。もう大丈夫」
預けていた身体を起こすと、急に冷静さを取り戻してきた。
抱かれたままいいたいことを言い、取り乱して泣いて、随分と恥ずかしいところを見せてしまった。でも、心の中にずっとあった大きなしこりが解れて、気分はすっきりとしている。
「あのね、さっき言ったことは本音だけれど、これも本音よ。私のせいで人が死ぬのは嫌なの」
「エルは優しいね。お母さんに似たんじゃない?」
「そんな……」
ラシェルの横髪をかきあげて、エスティリオが悪戯げに笑った。
「容姿についてはすぐに元に戻せるよ。変身薬の効力を消す魔法薬を、服用すれば良いだけだから」
「宮廷魔道士が半永久的な効果があると言って少し自慢げだったから、かなり強い薬だと思っていたのだけど、すぐ戻せるのね」
ほっとして胸を撫で下ろすと、エスティリオはチッチッと舌を鳴らした。
「俺を誰だと思ってるの? 俺より強い魔法薬を作れる人はそういないよ」
「ふふっ、そうだったわね」
「今すぐ作って飲ませてあげたいけど、現状のまま元の姿に戻るのは危険すぎる」
「それは分かるわ」
魔塔には、魔塔アカデミーの卒業生も多い。ラシェルが在学中に居た人だっているし、魔塔には帝国からの使者も来る。
皇女だと明かしたのはエスティリオにだけだし、皇宮ではひっそりと暮らしていたとはいえ、そんな危険は犯せない。
「蠱毒については俺に任せて欲しい」
「それって……」
さっきエスティリオは、術者を殺せばいいと言っていた。任せるというのはつまり……。
何をするつもりなのか、嫌な予感が走る。
返事を出来ないラシェルに、エスティリオは「信じて」と真正面から見つめてきた。
ラシェルの考えはきちんと伝えた。
殺すのは嫌だとハッキリと。
だからもう、エスティリオを信じるしかない。
「分かったわ。エスティリオを信じる」
「うん、ありがとう」
エスティリオが甘えるように、ラシェルの身体に抱きつき擦り寄ってくる。まるでリオが甘えてきた時のように。