呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

「行く前に一つ確認しておきたいんだけど」
「何かしら」
「エルの変身後の姿を知っているのは、皇帝と宮廷魔道士一人だけ?」
「ええ、そうよ。知っていると言っても、もう忘れてしまっていると思うわ。もう7年も経っているし、変身してから部屋を出るまで3分とかからなかったもの。変身後の姿なんて、覚えようともしなかったでしょうから」

 月日の流れは早いもので、あの日からもう7年も経ってしまった。日々色んな人と会う皇帝が、数分見ただけのラシェルを覚えているとは思えない。

「なら良かった。エルの姿を覚えているようなら、行く前にその変身を解く薬を飲んでもらって、別の変身魔法薬を飲んでもらわなきゃならなかったから」
「その方がよりいいのではないかしら?」

 万が一に備えるなら、今の姿から更に別の姿になった方が良さそうなものだけれど。不思議そうにするラシェルに、エスティリオは追加で説明してくれる。

「そうでもないよ。薬を使って無理やり姿を変えるというのは、体にかなり負担がかかるんだ。ラシェルが服用した魔法薬はかなり強力で、解くための魔法薬も身体への負担が大きい。そこに更に変身魔法薬を飲むとなると、身体が混乱するかもしれない」
「混乱? というと」
「自分の身体が自分を忘れてしまうかもしれない、という事。あまり服用しすぎると、元の身体に戻らなくなってしまった、なんてケースもあるからね。まだ2回目だけど、エルは魔力が全くない分、魔法に対する耐性があまりないから、大事を取るに越したことはない」
「分かったわ」

 変身後の姿を決めるのは、変身薬を調剤する際に入れる他人の身体の一部で決まる。
 一人分を入れれば完全にその人に成りすますことが出来、複数人のものを入れればブレンドされ、飲んでみるまではどんな姿になるかは分からない。
 ラシェルに飲ませた薬には、ほぼ間違いなく複数人分の体の一部が入っているはず。既にいる人がもう一人現れたら問題になるから。事を荒立てたくない皇帝だってそれは望まないだろう。
 皇帝も宮廷魔道士も、薬を服用した後どんな姿に変わるかその場で知ったはずなので、あの数分間でラシェルの姿を覚えていなければ、正体がバレることはない。

「ねえ、エスティリオ。私を連れて行ってどうするつもりなの」
「エルは自分に呪いをかけた皇帝と魔道士がどうなるか、知る権利がある。だから連れていく。自分が知らないところで事が終わるなんて、気持ち悪いでしょ? もちろん見たくないなら残ってもいいけど」
「……行くわ」
「うん、そう言うと思った。エルの事は俺が絶対に守るから」

 そんな説明を受けてから今日、いよいよ出発の日を迎えた。
 
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