呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

 魔力を奪うこの行為は、魔道士にとって死よりもある意味残酷だ。
 その残酷さをよく知っているから、ライエはほとんど、その力を行使してこなかった。使うにしても公にはせず、こっそりと。

「う、嘘だ……」
「魔塔主に受け継がれる秘術の話って本当だったのか」

 どよめく聴衆に向かい、薄気味悪く笑うエスティリオ。
 
「俺はライエ様ほど優しくはないんでね。大切な人を守るためなら何でもするよ」

 再びラシェルに近寄ったエスティリオは、懐からもうひとつの小瓶を取り出した。
 それをラシェルの手に握らせる。

「もう姿を偽る必要はなくなったよ。これを飲んで」
「これは……分かったわ」

 ラシェルは意を決し頷き返すと、一息に瓶の中の魔法薬を飲み干した。
 するとその姿が陽炎のようにゆらめき変化する。
 栗色だった髪と瞳は、ミルクティー色の淡い波打つ髪とすみれ色の瞳へ。頬にあったそばかすは消え、貧相だった体つきも艶やかに。
 エスティリオが知る10代の頃のラシェルよりも、ずっと大人びて綺麗になっていて、思わず息を飲んでしまう。

 ――ああ、失敗したかも。
 
「ここで飲ませなきゃ良かった」
「え?」
「いや、こっちの話」

 元の姿になったラシェルに目を奪われたのは自分だけではなかったことに気がつき、エスティリオは激しく後悔した。
 周りで見ていた人達から、感嘆の声が漏れ出ている。
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