呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

「この……不幸者が!! 生きて宮から出してやったというのに、殺さず生かしてやったその恩を忘れたのか?! 」
「お父様……」
「約束を破り身分を明かしていた上に、魔塔主に擦り寄り父親を愚弄するなど、恥を知れ!」

 どうしようもないな、この父親は。
 心の内で舌打ちをして、震えるラシェルの肩を抱いた。
 
「恥を知るのは貴方の方でしょう。これ以上の醜い真似はおやめ下さい」
「ただで済むと思うな、小僧が。我が帝国の力を持ってすれば、魔塔など一日と持たずに落としてくれるわ!」
「まあまあ、落ち着いて。魔塔主領は絶対不可侵なのをお忘れですか?」
「はっ! それがどうした? そんないつできたかも分からぬ取り決めになんの意味がある? 領土を広げるちょうどいい機会だ。おいっ、今すぐ兵を上げろ!!」
「ああそう……」

 帝国の人間が命令バタバタと動き出し、招かれた他国の人間はどうしようかとオロオロしている。
  
「みんな聞いたよね? カレバメリア帝国の皇帝が、魔塔主領を攻略するって。言質は取ったよ」

 薄く笑んだエスティリオからズルズルと、幾重もの影が伸び床を這う。それはパーティー会場の中だけでなく外へまでも拡がり、留まることを知らない。

「な、何だこれは」
「魔塔主は秘術を使うことを許されている代わりに、他国は攻めないと誓約している。けれど攻められるとなったら話は別」

 就任式の際、各国の要人たちの前で誓約書にサインをする。魔塔は他国を攻めないと。
 魔塔主は絶大な力を得る代わりに、この誓いを破れば代償として死が待っている。
 ただし、自発的な攻撃はだめでも防衛はまた別。魔塔を守る為の攻撃は良いと、但し書きとして記されている。

「今すぐここで、皇宮にいる全ての帝国民から魔力を奪おうか? もちろん帝国に賛同する国があるのなら、こちらにも容赦はしないよ」

 魔力を奪う能力が及ぶのが、一人二人と思ったら大間違いだ。
 エスティリオの無駄に多すぎる魔力のおかげで、皇宮内くらいならば軽くカバー出来る。
 会場内にいる招待客達にも目を向けると、エスティリオに向かって一人、また一人と膝を折る。
 
「私は西フマラ国の第1王子です。西フマラは魔塔主様の意思に従います」
「ラドバドル公国も、魔塔主様に従います」
「我が領土はカレバメリア帝国の支配下にありますが、魔塔主様に従います」

 次々と魔塔側に賛同者がつき、皇帝と僅かな臣下のみが取り残された。
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