呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
「みんな魔塔と戦うのは嫌だってさ。魔力がなくなったら、それこそ生活に困るもんねぇ」
「くっ……」
魔力がなければ、明かり一つろくにつけられない。煮炊きも、食料の保存も、生活の多くは魔道具があるからこそ成り立っているのだから。
「このまま開戦してもいいけど、魔塔を攻める間に、自国の領土を取られないように気を付けなよ。何せただのよく斬れる鉄より、魔力を付与した武器の方が圧倒的に強いから。小国でもあっという間に攻め落とされちゃうよ」
皇帝がカクンッと膝から崩れ落ちた。
己の敗北を悟り項垂れている。
「何が望みだ」
「もちろん謝罪は必要だよね。ラシェルを生まれてからすぐに殺そうとしたことでしょ、離宮に母親と一緒に幽閉したことでしょ、それから居ないものとして扱ったこと、恩着せがましく生かして出してやったって言ったこと、それから……」
「エ、エスティリオ。もういいから」
指を折りながら謝罪して欲しいことを並べていると、ラシェルが顔を赤らめながら止めてきた。
「お父様……。私を愛して欲しいなんて欲張りは言いません。けれど魔力のない人は、帝国民にもいるのです。どうか偏見なく、全ての帝国民が幸せに暮らせるようご配慮下さい」
ラシェルは優し過ぎる。
あんな酷い扱いを受けたというのに、まだ父と呼んで敬うのだから。
パチパチと、誰からともなく拍手が沸き起こる。それは次第に大きくなり、会場全体を包んだ。
「父上、もう良いでしょう。見てください。ラシェルの存在を恥じる人など居ないのですから」
皇太子が皇帝の側に寄り、その背に語りかけた。
「ラシェル……。何も知らなかったとはいえ、兄として何もしてやることが出来ずにすまなかった。こんな私だが、君を妹と呼んでいいかな?」
驚いた顔をしたラシェルがこちらを見てきた。頷き返してやると嬉しそうに顔をほころばせて、皇太子の手を取った。
「……はい、お兄様」
そんな熱い抱擁を見せられると、心中穏やかではいられないが、兄弟だからと自分に言い聞かせる。
この皇太子ならば、帝国の未来はそう悪くなさそうだ。何度か話をする機会があったが、ラシェルに似てよく出来た人だと思う。