呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

「どのくらい細かくする?」
「そちらはまずは粗めに。レンズ豆くらいでしょうか。そこから徐々に目の細かいものを作っていく予定です」
「ん、分かった」
 
 ハンマーで砕く軽快な音が、小屋に響く。
 偉くなったのに喋り方が変わってないことに気がついたラシェルは、エスティリオとアカデミーで過ごした頃を思い出した。

 ラシェルは生まれてすぐ皇帝に殺されそうになったが、皇宮でひっそりと暮らすことを条件に生きることを許された。
 目立たぬよう小さな離宮で母と二人。時折清掃や洗濯物の為にメイドが出入りする他は、食事が運ばれてくるだけ。それもどこかで作ったものを持ってくるので、いつも冷えきっていた。

「温め直しの魔法、得意になっちゃったわ」

 そう言って笑う母。
 侍女のひとりも付いていない状況でも、明るくて笑顔を絶やさない人だった。
 パーティーや茶会に出ることも式典に出ることも許されず、居ないものとして扱われたが、母がいれば寂しくはなかった。

 ラシェルが10代に入って少したった頃だった。離宮で目立たぬよう、ひっそりと息を潜めながら過ごしていたある日、母が珍しく皇帝のいる宮へと赴いた。

「皇帝陛下にお願いがございます。どうかラシェルを魔塔のアカデミーへ通わせてやってください」

 貴族の子女は大抵13歳を迎える歳に、どこかのアカデミーへと入学する。中でも魔塔が運営するアカデミーは大陸中でも最高難度で、貴族や王族であれば誰でも入れるというわけでは無く、優秀な生徒のみが集められている場所。逆を言えば優れた才能を持ち、高位の魔道士の推薦があれば、家柄とは関係なく平民でも入学できるという特徴もある。

 母は他の皇子や皇女がアカデミーに入っているのに、ラシェルにだけどこへ入学させるか全く話が出ないことに焦っての行動だった。
 駄目だと一蹴する皇帝に、母は食い下がる。

「万が一、皇女がどこのアカデミーへも入らないでいることが漏れれば、それこそ皇帝陛下の恥でございましょう」
「余を脅しているつもりか」
「滅相もございません。ただ陛下の威光に更なる傷が付くのは如何なものかと、心配になっただけですわ。それに魔塔のアカデミーは在学中、身分は伏せて生活をしますので、ラシェルが皇女だとは誰にも分かりません」

 母がラシェルを、最難関である魔塔アカデミーへの入学を希望した理由は、ここにある。
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