呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

 魔塔アカデミーでは在学中、自分がどこの誰なのか伏せて生活を送る。ファーストネームだけを名乗り、どこの家の者か分からないようラストネームは秘密のまま。
 それは魔塔のアカデミーが各国の子女が集まる場所で、国同士の仲の良い悪いや強弱といった複雑な関係から、生徒同士で要らぬ軋轢を生まないようにと配慮された結果だった。
 入学の際、自分の身分やラストネームを明かさないよう魔法の施された誓約書にサインをする。そうすると、うっかり自分がラストネームを名乗りそうになった時などに魔法が発動し、喋れなくなるのだ。
 身分を徹底して隠せるので、魔力無しの子がいると知られなくない皇帝にとっても、魔塔アカデミーへなら許してくれるだろうと踏んでの提案だった。
  
「魔力を一切持たぬ者の入学など、出来るわけがなかろう」
「入学の許可が降りるかどうかに、魔力の強さや有無は関係ないと伺っておりますわ」
「たわけが! 持っていて当たり前のものを持っていない奴を入学させる馬鹿がどこにいる?! お前の頭はどこまで能天気なのだ?」
「試験だけでも受けさせてやってください。ラシェルは陛下の血を引く子ですよ? 優秀な子ですから、必ずや良い結果を出すでしょう」

 頑として譲る気のない皇妃に、皇帝は「勝手にしろ」と言い、ラシェルは入学試験を受けることが出来た。
 入学試験には書類審査や面接の他、筆記試験や魔法の実技試験もあった。
 実技試験では「魔力が無いので魔法は一切使えない」と伝えると、試験監督をしていた魔道士に無表情のまま「それでは行ってよろしい」と言われたのを覚えている。
 あの時は、やはり自分には入学は無理だろうと思ったが、ラシェルの諦めに反して皇宮には合格通知書と入学許可証が届いた。
 これには皇帝も驚きを隠せず、許可証が本物かどうか宮廷魔道士に確認させたほどだった。
 他にも皇子や皇女は沢山いるが、全員が全員、魔塔のアカデミーへ入学が許されたわけで無い。
 喜ばしい出来事ではあったが、それでもラシェルは本来ならいない存在。魔塔アカデミーへの入学を誰にも祝われることも、他の誰かへ知らされることも無く、ひっそりと皇宮から魔塔主領へと旅立った。
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