呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

「お姉さんも授業じゃないの?」
「あぁ……私はね、次の授業は魔法を使う科目なのよ。だから出る必要が無いの。ほら私、魔力無いでしょ?」

 自分に魔力がある人は、相手の魔力の流れを感じ取れるらしい。特に敏感だったり優れた能力を持っていると、どのくらいの魔力量があるのかまで推し量れるという。
 少年にもきっと、ラシェルに魔力が少しもない事は分かるだろうと話すと、もう一度頷き返してきた。

 なんだか親とはぐれてしまった子犬みたい。

 金色の瞳が不安げに揺れて潤んでいる。
 はぐれて一人になってしまったと言うより、もしかしたら一人になりたかったのかもしれない。
 何となくそう思ったラシェルはそっと距離を取って離れてあげるべきかと迷ったが、どうしても放っておけず、もう一度話しかけた。

「このスプレーの中身、なんだと思う?」
「中身? 水じゃないの?」
「うふふ、水だったらジョウロでかけた方が早いでしょ。答えはね、ミルクよ」
「ミルク?」
「見てこれ」

 カモミールの茎や葉がよく見えるように少ししならせると、少年は「うげぇ」と気持ち悪そうに声を上げた。

「アブラムシがすぐついちゃうの。こうしてミルクをかけるとあら不思議。アブラムシ退治できるのよ」
「へぇ」
「その代わり、ミルクが乾いてアブラムシを退治出来たら、今度は同じようにお水で洗い流さなくてはだめよ。今度はカモミールが枯れてしまうから。霧吹きのし過ぎで指が痛くなってきてしまったわ」

 ふふっと指をさすりながら笑ったラシェルに、少年は「撒けばいいの?」と呟いた。

「このミルクを撒けばいいんでしょ? 貸して」

 そう言って少年はラシェルの手からミルクの入った霧吹きのボトルを開けると、魔法の呪文を詠唱した。
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